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「及川の?ああ、そりゃあ、相手は京(きょう)さんだろうな。うちの中で一番上のベテラン。仕事もできて職員との付き合いもいい。顔も良くて何やってもピカイチ。そんな上司さんだよ。よく2人で飲みいったりしてるな」
「…なんだよその完璧上司」
何となくわかった気がする。
俺が過去の人にされた理由ってその人が好きだからでは…?だってあの先生があんなに楽しそうに笑って電話かけてたんだよ…。
俺には私情を挟むことは〜なんて言っときながらプライベートの電話して、仕事では見せない顔してた。普通そんなお偉い上司さんとプライベートの電話あんなに私情にうるさい人がする??
…それだけ特別な人って事じゃん。
「そういやまだ京さんに挨拶してなかったよな。出張行っててな丁度今日帰ってきて、明日には仕事にも戻ってくるだろうから挨拶するといいよ。…まぁ俺から言えるのは一つ。覚悟しとくことだな…」
「覚悟??」
なんだか意味ありげに頷いて、
顎の髭を撫でては考え込む津田さん。
「んー、まぁ恒例行事??お前にはきついかもな…」
全然意味がわからないよ津田さん…。
あからさまに項垂れる俺に、はっはっはっは!!なんて笑いながらぽんぽん頭を撫でられた。
てっきり俺の中では感動の再会を得て、先生とまた話して、二人でラブラブ胸キュンストーリーが始まるのだと思ってた。
お揃いの指輪を渡して、喜んでもらって、
同棲なんか始めちゃって一緒に毎日を過ごせる様になるのだと思ってた。
だけど現実はそう甘くなかった。
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