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「君が夜野君?初めまして。場田京(ばだ きょう)です。」
先生の腰に抱きつく俺の顔を覗いてみせた噂のアイツ。むかつくほど顔のいい男だった。
先生とはまた違ったタイプのイケメンって感じで…
「夜野陽です。よろしくお願いします 」
胡散臭い笑顔を向けてくる。
「若いね。可愛いな」
さらりと前髪を払いのけられて、頬へと手を添えられた。
“挑発”
その二文字が1番当てはまるだろう。
間違えなくこの人は俺を挑発してる。
きっと全てを見透かして、俺の弱点は何か。俺をイラつかせる為には。俺の表情を崩す為には。それを探ってる。
涼しい顔をして、切れ長の瞳で俺を見つめて。
その瞳の奥で狡賢いことを考えている。頭がいいのだろう。ことごとくムカつく奴。
「随分彼を気に入ってるんだね。妬けちゃうなぁ」
先生へと視線をうつして、そう言うとそっと先生の腰へ手を添え自分の元へと引き寄せた。
それにより引き離された俺と先生。
「まぁ少しくらいなら貸してあげるけど…ちゃんと返してね?僕のだから。」
直前まで挑発しているのだと、俺を試しているのだと、そんなことわかっていたのに。あからさま過ぎるほどに先生にベタベタくっついて俺の顔を見ては鼻で笑う。
プツンと何かが切れた音がした。
こんなにも人間相手に殺意をめばえたことは無いな…。津田さん…あの時、覚悟しとけって言われた意味がわかったよ。
「ね?及川先生」
京さんが先生に微笑むと、少し赤くなった耳。
恥ずかしそうに京さんから視線を逸らしては
「そうですね」
俺の顔を一度も見る事無くそう言った。
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