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・ 「あー…くそっ。むかつく」 『あーあ。そんな目で彼を見ないで欲しいな。この仕事…君にはまだ早いみたいだな』 呆気なく負けた。 あの人は瞬時に俺の弱点を見つけた。 俺が何を嫌がって、何に怒りを感じるのか、何に心を乱されるのか。完敗だ。 私情を挟まない。私情を挟むことは危険だ。だなんて言われているこの仕事で…先生が俺の弱点だと見破って、その挑発に思わず反応してしまった。 上司である京さんを睨みつけて、怒りを丸出しにした。私情ダダ漏れってやつだ。 京さんに撫でられた頭が、お前はまだガキだと言われたようだった。自分でも勿論まだまだだと痛感した。 言われた言葉たちが何度も頭の中に浮かんでは、ぐるぐると回る。 心臓が痛い。 胸が苦しい。こんな気持ちはいつぶりだろう。 あんなに噛み付いた態度をして、結局はこれだ。 京さんの問いかけに、そうですね。と呟いた先生。 その表情が、態度が頭から離れない。 耳赤くなんかしちゃって。 他の奴に言われた言葉で照れた顔をした。 「いてぇーなー…」 こりゃ、しんどい。しんどい。 本当にもう俺だけの先生は居ないらしい。 それに相手は完璧上司さんときた。 考えてるだけで病むね。 行き場のない怒りと切なさとで胸が一杯だった。 左薬指の指輪。 ここに来る前はあんなにも輝いてたのに、 今ではもう寂しげだ。 .

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