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・ *********** あれから二週間程がたった頃。 相変わらずの怒涛の毎日で仕事に追われていた。 担当患者の報告書等の仕事は元々していたが、それ含め実際に検査や治療に携わることも少しでてきてほかの事を考えている余裕が無いのが本音だ。 あの日から、仕事以外で先生と会話をする事は無い。京さんと一緒に仕事する機会もあったがさすがは上司。周りから慕われる理由が、ここで一番の座に座る意味がわかった。仕事面では尊敬している。 書ききった報告書をまとめ、ファイルに収める。 午前中にだいぶ仕事を終わらせられたことに安堵。それと共にやってくる眠気。お昼におにぎりでも買いに行こうと思っていたが先に少し眠る事にする。 重たくなる瞼をゆっくりと閉じた。 半分眠っていて、半分意識がある。 そんな感じだ。 久しぶりに先生のことを考えようかと思う。 あれからも何度か京さんと一緒に退勤する先生や、出勤してくる先生を見かけた。お昼にご飯を食べに行ってる姿だとか、喫煙所から出てくる2人だとか。 あー俺ストーカーかよ。なんて思う。 どれだけ目で追ってんの。無意識に先生を目で追い探してしまう癖がついたようで…だいぶ先生不足だ。 先生の嘘つき。先生のばーか。 人のものになんかなっちゃってさ 俺はずっと先生を忘れてなかったのに すると、そんな俺の気持ちを落ち着かせるかのように、髪をそっとさらさらと撫でられた。 柔らかく優しく、何度も撫でられて どこか懐かしい感覚がして、気持ちよさに本当に眠ってしまいそうになる。 「お疲れ様」 聞こえた声は先生に似ていた 暖かな響き、心地よい低さの声。 俺の好きな声。 また、すぐ側で香ばしいキャラメルと甘いバニラの香りがする。出来たてのパンケーキのような…ああ。昔院内で先生と食べた。懐かしい。 あれと同じ匂いだ。 じゃあこの俺の頭を撫でるこの手は誰の? 眠くて眠くてたまらないのに心地よい気分。 酷くお腹が空いていたのだと思う。 溜まりに溜まった綺麗なものとは相反する感情。 怒り、嫉妬、独占欲。それが俺を動かした。 パシリと頭を撫でる手を掴んでは、そっと重たい瞼を開いた。 ・

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