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「離せっ!…っ、」
思ってないくせに。
「…っ、やだ、離せ」
全然離れて行かないくせに。
もう力なんてそれほど込めていない。
それでもなお先生はそう言う。
本気で嫌なら離れていける筈だ。
振り払って逃げていける位の力。
また簡単に離れていける筈なのに。
「お前の…せいだ」
俺の胸にしがみ付いて先生は泣いていた。
それが離すなっていってるみたいで…離せっていったり離すなってしたり一体どっちなんだか。
でもこの人はとても不器用だから。
そんな事も全部俺には愛おしく感じるんだよ。
先生がずるくてもいいよ。
どれだけわがままでも、利用しても構わない。
俺のせいにしたっていい。
「いいよ…全部俺のせいだから。俺のせいにしていいから。」
腕の中に閉じ込めて、抱き締める。
昔は先生にすっぽりと抱き締められるくらい俺の方が小さかったのに。今では俺の腕の中に先生がすっぽりとおさまる。俺より小さくて、俺より細い。
俺が側に居たいんだ。
ずっとこうしたかった。
ちゃんと大人になって先生に会いにきたかった。
「俺のものになってよ…先生」
同じ所に並んで先生の恋人になりたかった。
控えめに俺の背中にまわされた手に俺まで泣きそうになった。
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