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「お前が既婚者だからっ…」
…。
「それなのにっ、また会いにきて」
「ちょっと待って?」
あの先生が、小さい子供のように泣き始めて、初めて見るその姿にオロオロとどうにか落ち着かせなければと思う。
思うのだけどその前に一言。
「俺結婚してないよ??」
「え?」
ぴたりと泣き止む先生。
泣き止んだのは良かったのだけど、情報量が多すぎて頭が混乱している。
「おっと、何泣かせてるの」
そこへやってきた京さん。
駆け寄ってきては引き離された。
「既婚者だろ…、その指輪!」
京さんに抱き締められながら、こちらを見ては悪者を見る目で俺を見つめてくる。だがそんな先生を抱き締めて、どうせ全てわかった顔で先生の味方をしている男が一人。
よしよしと先生をなだめて、ニコニコして。
あー。なんかわかった気がする。
「これ婚約指輪みたいなものなんだ…」
「…相手がいるってことには…、っ、変わりないじゃないか」
まんまと俺は京さんの手のひらで転がされていたわけだ。先生を抱き締める京さんがひたすらに悪魔に見えるよ…。
「違うよずっと先生が好きだよ」
こんな形で伝えるとは思ってなかった。
こうなったらヤケクソだったが、格好悪過ぎるだろ。
「…なんだよそれ…」
気が抜けたように京さんに寄りかかって、
またポロポロ泣き出す。
「お前に…相手がいると…っ思った」
今までの先生の言動に辻褄が合った。
付き合っている相手がいるのかと聞いたとき、お前がそれを言うかと怒られた。それに俺を過去の人だと言ったり。
この指輪を見てのことだったのか。
「だからお前の好きと、自分の好きとでは違うんだなって…想ってたのはこっちだけかって…あの頃のお前じゃないし、変わりすぎだし、子供の言葉信じた自分がバカだったなーって…」
必死に涙ながらに伝えてくる先生が愛おしい。
「一緒だよ」
京さんは俺が先生のこと好きだなんでとっくにわかってたはずなのにな。
遊ばれて面白がられてたとそこでやっと気づく。
すっかり京さんに慰められてる先生にむっとした。
いつまでそうしてるの。と、腕をとり、自分のもとへと引き寄せる。そのまま抱き締めてみせたら、京さんに頭をぽんぽん撫でられた。
「あら、ついにとられちゃったか」
「俺の先生!!」
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