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携帯を閉じる。
涙なんて出やしねぇ。
『飽きた。お前、もういいわ』
2分程前まで恋人だと思ってた奴からのメールだ。
「2ヶ月かぁ…結構、ラブラブだと思ってたんだけどなーお揃いの指輪とかしてさぁ…」
日に左手を翳し、指輪の放つ白々しい光に苦笑いが漏れる。男にしちゃ綺麗と言われる指からそれを抜き、ぽとんと足元に落とすと、カチンと小さな音を立てた指輪は転がる事無く、その場でくるくると回って足の間に落ち着いた。
鬱陶しくなって蹴り飛ばすと、チリンチリンと音を立てながら道の方へと転がって行く。
「帰るか」
待ち合わせの目印にしていた像の足元から腰を上げると、男が手を差し出して来た。
「なに?」
「これ」
今他人に構われて嬉しい気分ではない、ツンケンして言うと、男は手を開いた。
きらりと光る銀色の輪は先程蹴り飛ばした物だ。
「捨てといて」
顔も向けずにそう言って歩き出すと、男は追い縋る様にしてついて来た。
「ケイ君だろ?佐藤だけど」
「はぁ!?」
確かにオレはケイだ、ケイゴ。
でもそうやって呼ぶのを許すのは恋人だけに決めてある。
「あんた誰?」
睨み付けるようにして男の顔を見ると、その背の高さに驚いた。オレ自身が170センチちょっとで、男としちゃ低い方なせいかもしれないけど、それでもここまで見上げるって言うのは滅多にない。
天辺についた頭は、しゃれっ気も何もない黒い短髪に、生真面目そうな顔をしている。
伸ばした茶髪なオレとは何の共通点もなかった。
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