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「佐藤」  学習能力が無い様に、佐藤と名乗った男は繰り返す。  キモいと思って無視しようと思った時、少し前の事を思い出した。 『ねぇ、暇?』 『恋人待ち~他当たってよ』  しつこくされるかと思ったけど、そのサラリーマンはすぐに少し離れた場所に座ってた奴に声を掛けに行った。  こう言う性癖してると、同類ってなんとなく分かる。そこに座り込んだ子もゲイだって気付いてた。  まぁネコみたいだから、オレは興味ないけど… 『サトウさん?』  男が近づくと、そいつはそう言って携帯から目を離した。  茶髪に赤いシャツ…雰囲気被ってんなーって見てたら、中身も似てたみたいだ。 『え…?違うのー?……まぁあんたでいいや』  …貞操観念が薄い。 『涼しいトコ連れてってくれる?ここ暑くって~』  する…とそのサラリーマンに腕を絡めると、ホテル街の方へと引っ張り始める。 『名前?ケイトだよ~ケイって呼んでくれる?』 「ああ。あれか…」  人違いだ…と言おうとしてその唇に気が付いた。  少し下唇が厚めの、しっとりとしてそうなオレ好みの唇。 「…………そう。ケイトだよ。佐藤さん」  そう言って笑顔を返すと、あからさまにホッとした顔で佐藤は微笑んだ。

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