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部屋に入った途端、ひんやりとした空調に身震いする。
外で掻いていた汗が急に冷えて寒い程だった。
抱きしめてくれれば少しは温かいし、雰囲気も出るのにと思ったが、佐藤は部屋の入り口で立ち尽くしたまま困った顔でこちらを見ている。
「上がらないの?あ、ごめん。まず入り口でしたい人だった?」
そうならそうと言ってくれればいいのに…部屋に向かいかけていたオレは、佐藤の傍に引き返しながら赤いシャツを脱ごうとした。
「えっと…脱がせたい?」
「あ、いや、どちらでも…」
歯切れ悪く言った佐藤は、靴を脱いで部屋へと踏み出す。きょろきょろと辺りを見回す様を見ていると、ラブホテルに馴染みがない事が分かった。
見た所30手前位か?いい年して来た事ないのか?童貞とか、ハズレ引いたか?
「シャワーは?ない方がいいならそれでもいいよ」
「……慣れてるんだな」
むっとしてシャツを投げつける。
「何それ、馬鹿にしてんのか?あんただってコレが目当てで出会い系してんだろ?」
サラリーマンとホテル街へ向かったケイトを見るに、こいつの目的もそうに違いなかった。
「もっと初心な子が来るって信じてた訳?」
「いや…」
だったら何がしたいんだ?こいつは。
イラっと来たけれど、今更何もせずにホテルから出る気はない。
佐藤のあの唇は、それだけ扇情的だった。
爪先で立ちながら、立ち尽くしている佐藤の首に手を回して口付ける。
思った通りのしっとりした唇を堪能していると、おかしな事に気が付いた。どんなへたくそな相手だって、へたくそなりにキスをすれば反応するはずだ、けれど佐藤はまったく反応せず、唇を引き結んだままだった。
「…ん……オレじゃやる気起きないんなら、なんで来たのさ」
高い位置にあるその黒い瞳を覗き込みながら厭味のように尋ねると、佐藤はやっとその魅惑的な唇を開く。
「試してみたかったんだ…男と出来るか」
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