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「ほん……っとうに、もう終わりだからな!っ…いっ」
下半身に伸びてきた手をぴしゃりと叩き、腰に走った鈍痛に呻く。オレの上で眠そうな目を懸命に開きながら、佐藤はぎゅうっと力を込めて抱きしめてきた。
「…ねむ……」
「じゃあ寝ろよ」
「いやだ…起きたらケイトがいないかもしれないじゃないか…」
その通りだっただけに、オレは口を噤ぐ。
「起き上がれねぇから今日は泊まってくよ。安心して寝ろ」
ぐいっと頭を胸の上に引き寄せてその背中をとんとんと叩いてやると、やっと安心したように佐藤は目を閉じた。
軽く頬をつねって起きないか確認し、そっとその体の下から這い出す。シャワーを浴びたかったが、その間に起きられても面倒なのでそのまま服を着ようとした。
「ケイ…」
どきっとして振り返る。
ベッドでうつ伏せたまま、起き上がってくる気配はない。ほっとしていると、佐藤の手がぱたぱたとシーツの上を泳ぎ始め、何かを探し始める。
「…ん……んー…」
出来心で、その骨ばった男らしい手を握ってやると、眉間に寄っていた皺が解れて安らかな寝息が聞こえ始めた。
「……ふん」
握られた手を振り払う事も躊躇われ、オレはもう一度その隣りに横になると、すやすやと眠る官能的な唇の端に遠慮がちに口付ける。
「おやすみ」
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