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「よぉ、ケイ」
「ケイゴだ」
つん…と言ってやると、頭上の気配が怯んだのが分かる。
2日前にフっておいて、平然と声を掛けてくる神経が分からない。
「なぁ、暇だろ?この前のメールなかった事にしてさ、ちょっと遊ばない?」
「…自分がフられたからってこっちくんな。オレ新しい相手と忙しいんだよ、鬱陶しいから消えてくんない?」
「んだと?下手に出て相手してやろうって言ってんのに…」
ヤる相手に逃げられたからってムシのいい!!
第一どこが下手だ!?
「そんなにヤりたいなら一人でマスでもかいてろっ」
もう一度派手にその間抜け面を張り倒して歩き出す。
二度目にぱぁんと音が響くと、流石に周りから失笑が漏れた。
「な…っおい!待てっ!!」
ぐいっと襟を掴まれてたたらを踏むと、引きずられるように引き寄せられる。間近に迫る軽薄そうな顔に、唾を吐いてやりたい気分になる。
「う…っ」
「ゴメンナサイは?したら許してやってもいいケド?」
下卑た笑いに嫌悪感を覚え、締め上げられた襟首に呻きながら元恋人を睨み付けている。
以前はカッコイイとも思った顔が歪み、今では滑稽な程ダサく見えた。こんな奴を恋人だと言っていた自分に反吐が出る。
「オラ、どうした!?」
力一杯襟を掴み上げている拳を、大きな手が振り払った。
「私の連れです。離して下さい」
佐藤が軽く肩で息をしつつ、オレとこいつとの間に割り込む。スーツ姿の後ろ姿に見惚れていると、肩をどんっと突き飛ばしてきた。
「…っ」
「うっぜ…早速男咥え込んでんのかよ。お前、変態なコトされてあんあん腰振んの好きだもんな」
拳を振り上げようとした瞬間、佐藤の手がオレの手をしっかりと掴んだ。
「手が汚れる。行こうか」
腰に回された手に力が入り、有無を言わさない佐藤に促されながらその場を後にする。
後ろから罵詈雑言が聞こえていたが、なんの反応も見せない佐藤の横顔を見ると、不思議と気にならなかった。
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