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あれから更に2日…オレはやっと楽になってきた体を起こす。
「あー…まだ声おかしいな」
2日前、うたた寝して目が覚めると世界が回っていた。
やはり体調を崩していたらしいオレは、立ち上がる事も出来ず、喉の痛みと39度を越す熱に襲われ、うんうん唸りながら何とかやり過ごしてやっと38度を切るまでになったのが今日。
「ベタベタ気持ちわりーフロー…」
まだ入れる程熱も下がっていなかったし、そんな体力もなかったが、夏場にエアコンのない部屋で過ごしたオレの体は汗に塗れて気持ち悪かった。
タイミング良く、佐藤との連絡の途絶えた携帯を睨む。
あのメール以降、一通もメールは来てなかった。元々の質なのか、ただでさえ少ない佐藤からのメールが無くなり、不安な中を過ごした2日間を思い出して苛々と携帯画面を睨みつける。
熱が出たから看病して欲しいとかは思わなかったが、気遣いの言葉を聞きたかった。
けれど、忙しいと言う相手にわざわざ連絡を取ってまで気遣えとは言えない。
「……」
魔が差した。
本当に、魔が差した。
普段のオレならそんな事は絶対にしない、すがりつくようで格好悪いから。きっとまだ残った熱のせいなんだと言い訳して、携帯電話を額に当てて、念じてみる。
「…電話……声、聞きてぇ…」
氷嚢の様に額の上に携帯電話を乗せて空を見上げ、色の濃さを増したそこに浮かぶ入道雲に、一降り来るのかと期待する。
独り取り残されたかのような心寂しさに目を閉じた。
佐藤の唇を思い出す。
抱き合えば鼻をくすぐる体臭も、オレより少し高めな体温も恋しくなって、瞼の裏にその顔を思い描く。
ヴヴヴヴ…
「!?」
ヴヴ…と額の上で暴れ出した携帯に驚き、布団の上に取り落とす。
『サトウ』
その文字を見て飛び上がった。
「うそ!?」
ドキドキとして見つめていたが、それが着信だと言う事に気付いて慌てて電話に出る。
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