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病み上がりにあんな事をしたせいかあの後当然の如く風邪はぶり返し、佐藤は忙しいらしい仕事の合間や、仕事を終えた夜遅くにやってきては甲斐甲斐しくオレの看病をしてくれた。
「…なぁ、俺の部屋に来ないか?ここよりは過ごしやすいと思うんだが…」
「オレ、この部屋気に入ってるから。暑くて汗掻くのは苦にならないし」
やっと調子を取り戻しつつあるオレは、久し振りに爽快な気分でいた。
「そうか…」
「それに明日から大学とバイトにも行こうと思ってるし。ここにはあんまりいないと思う。またシフト決まったらメールするよ」
「病み上がりなのに?」
「生活しなきゃな」
何か言いたそうな佐藤に気づいて促す。
「何?」
「俺が養うから、バイトも止めないか?」
なんとなく分かってはいたが、思っていた通りの言葉に溜め息を吐いた。
「何?オレを囲いたいの?」
「そうじゃない!」
「でしょ?だから止めない」
バーで働いてるって言うのが、心配で仕方ないのは分かるが、時給もよくて性癖について詮索もされないなんてバイトはなかなか無い。
「苦学生は好きでやってるの。悪いけど譲らないからな」
そう眉間に皺を寄せて言ってやると、納得はしていない表情だったが渋々と引き下がってくれた。
どこか物思いに沈んだ様子に気づき、どうしたのかと尋ねる。
「なんかあった?」
「…ん?うん…離れていたくなくて…」
軽く流せてしまうそんな戯れ言も、真っ直ぐこちらを向いて言われてしまうとどきりとした。
「ケイト、名前を呼んでくれないか?」
「?」
広げられた腕の中に収まりなが、その耳元で囁く。
「…アキヨシ」
「…うん」
「アキヨシ」
夏だと言うのに、その腕の温かさが気持ちよくて…オレは大分マイってるんだな、と感じながら佐藤の望むままに、何度もその名前を呼んだ。
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