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 もっぱら、会うとまずホテルへ直行が定番となりつつあった。  最初に使っていた待ち合わせ場所やホテル街は、前彼に会う可能性が高いから…と使わなくなった。代わりに車で少し走った場所にあるラブホテルを使うようになっていた。  工業地帯の程近くに作られたそのラブホテルは、場所が辺鄙な場所に建っている為か、ゲイ達の御用達となっており男同士でも入りやすい。 「…やけにサイレンの音がしてるね」 「ああ、この先のどこかで火事があったとか聞いたけど…」  そう言ってハンドルを切りながら、右手に立ち並ぶプラントの辺りを見やる。  化学工業が多いだけに、酷い火災にならなければいいな…と眉間に皺を寄せると、佐藤がそっと手を繋いできた。 「怪我人が少ないといいな」 「…うん」  同じ事を考えていた事と、繋いだ右手の温かさに照れて笑みを零すと、佐藤はやはり同じような照れた笑顔をしている。 「そうだ、今度山に行かないか?」 「山ぁ?ピクニック?」 「登山、時々行くんだ。気持ちいいよ」  気持ちいいならベッドの上の方がいい…と口を開きかけた時、前方から耳を劈くブレーキ音と衝突音が聞こえた。 「え!?」  ガシャァァァンッ!!  繋いだ右手の感触から、佐藤の反応が遅れたことが分かる。衝撃に備えて固く目を瞑った瞬間、ハンドルを放棄した佐藤がオレの上に覆いかぶさった。  オレの記憶は、そこで途切れている。  次に目が覚めると病院らしい部屋のベッドの上で寝ていて、姉が傍らでしくしくと泣いていた。 「…ねぇさん?」 「圭吾?」  姉に伸ばした左手にはぐるぐるに包帯が巻かれていたが、痛みは感じない。  麻酔が効いてるんだろうか?  切れた時が痛そうだな… 「よかった」  姉が安堵の笑みを浮かべる。  優しい笑みだ。

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