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何が起こったのかわからないオレは、笑いながらも泣いている姉に事情を尋ねた。
「多重衝突?」
前方で居眠り運転をしていた車が壁に激突、それに巻き込まれるように4台の車が衝突事故を起したと、震えながら姉は教えてくれた。
それを聞いてベッドの上で飛び起きる。
「どうしたの!?起き上がっちゃダメ!」
「姉さん!オレ…連れがいて……っ」
痛んだ左腕を押さえ呻くと、姉が代わりに聞いて来て上げるから…と部屋を出て行った。
同室のベッドを見回してもそこに佐藤らしき姿は見えない。同じ場所で事故に遭ったのだから、同じ病院に運ばれている筈だ。
そう考えてベッドから降りる。
よろけるが立つ事は出来るらしい。
ぐるぐるに巻かれた腕を庇いながら、壁伝いに歩いて行く。
「圭吾!」
向こうから駆けて来た姉が、どうしてじっとしてないのかと涙声で尋ねてくるが、それを振り切って歩き出す。
「オレ、探さなきゃ!探さないとっ!」
そう絶叫するオレが、看護師達に取り押さえられるのにそう時間はかからなかった。
ベッドに押さえつけられ、鎮静剤を打たれながら看護師に尋ねかける。
「オレと一緒に事故に遭った奴!どこにいますかっ!?」
掴み掛かった腕をやんわりと解かれながら、看護師は分からないと首を振る。
「圭吾、今ね、工場火災の人も運ばれてきてて、いろんな病院にバラバラに搬送されたんだって…」
「…」
「私、調べてくるから、ね?お願いだから自分の怪我の事も考えて」
また姉は泣いていた。
泣かせてばっかりの自分の不甲斐無さを感じながら、ぼんやりとした意識の中、目を閉じた。
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