40 / 312
38
「西宮さん、こちらです」
傍らの姉の言葉に、愕然となる。
生真面目そうな顔が、オレではなく隣りの姉を見て微笑んだ。
「お待たせして申し訳ありません。はじめまして、西宮秋良(にしみやあきよし)です、小夜子さんとお付き合いさせて頂いてます」
後ろに背の低い両親らしき二人を引き連れた佐藤は、そう言ってオレに手を差し伸べてきた。
その手を、掴む。
…笑え!
笑うんだ。
そう自分に言い聞かせ、精一杯口角を上げてみせる。
「はじめまして…」
震えないようにそう応える事が出来た時、オレは自分自身に拍手を送ってやりたかった。
ともだちにシェアしよう!