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「…ん。上も脱がせて下さいよー皺になるぅ」
足の間にしゃがんでいる店長にそう言い、はだけたスーツの襟元をぱたぱたと振ると、眉尻を下げた店長が顔を上げる。
「んもー…もうちょっと雰囲気とかさぁ」
「無くても出来るっしょー?」
「出来るけどさぁ」
ぶつぶつと言う店長に服を脱がされながら、オレはお気楽に笑う。
チン…
小さな金属音に閉じかけた目を開けると、ローテーブルの足にぶつかって止まった指輪が見えた。
「…どうする?」
「…」
「拾う?」
店長の首に手を回しながら首を振る。
「もう、いらない」
微かにコロンの匂いのする首元に顔を埋め、肺一杯にその匂いを吸い込んだ。
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