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「てんちょーぅ…頭痛いっす……腰も…」
ベッドの上で俯せになりながらぐだぐだと訴えると、シャワーを浴び、ビール片手にすっきりした顔の店長がベッドに腰かけた。
「オレにも酒下さいぃ」
「迎え酒じゃなくて薬上げるから」
「やーだー」
「シャワー浴びておいで」
「やー」
首を振ろうとして痛みに呻くと、店長が苦笑する声が聞こえてくる。
「素麺茹でてやるから、風呂行ってこい」
「……はぁい」
立ち上がり、テーブル傍に落ちたままの指輪を拾い上げ、銀色の輪の内側に刻まれた赤い石とakiyosiの文字を覗き込む。
声には出さずにその名前を呟き、姉との仲睦まじい姿を思い出す。
「……ぁ」
穴から溢れて足を伝い落ちる白濁液の感触に、我に返って慌てて歩き出す。
「風呂どこですか?」
「そこ。タオルは棚な」
指差された扉に入り、熱めのシャワーを浴びる。
「……」
指輪を握り込んだままになっていた手を開き、排水口に落とそうとつまみ上げた。
水を弾く銀の指輪に、視線を落とす。
指を開けば、転がり落ちて二度と拾う事が出来ないだろう。
「オレは……」
姉と佐藤の姿を思い出しながら、もう一度指輪に視線を落とした。
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