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「…あ」  オレの視線に気付いた佐藤が、右のこめかみに手を当てながら苦笑する。 「この傷が気になるかい?」  男らしい指先でその傷に触れて困った様に言う。  少し伸びた髪に隠れるように、引き連れた痕があるのを見つけてしまった。ほくろの位置まで当てる自信がある記憶の中に、そんなものはない。 「山で怪我したらしいんだ」 「…らしい?」  そう尋ね返すと、 「怪我のせいで記憶があやふやなんでね。両親からそう言われたんだ」  『記憶があやふやな』に引っかかりを覚える。  もしかしたら?  その期待に、左手に嵌めた指輪に手を当てる。  馬鹿らしすぎて、そんな可能性があるなんて思いもしなかった。  ただ純粋に、要らなくなったから捨てられたのだと… 「山、好きなんですか?」 「え?ああ、夏山だけだけどね。興味あるの?」 「あるんですけど、何から始めていいか分からなくて。誰かに教わりたいなって思ってたんです」  震えないように、ぎゅっと手を握り締めた。 「話聞かせてもらってもいいですか?」 「いいよ」  そう返事され、オレはほっと息を吐いた。

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