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「ころぽっくるのケーキね!ここのケーキ好きよ!ありがとう」
「ごめん、落としちゃったから崩れてると思う」
スタイリッシュで落ち着いた雰囲気にまとめられたその部屋は、姉の趣味と言うよりも佐藤の趣味なんじゃないかと思わせた。
「雨で転んだ?」
「違うよ」
ふふ…と笑う姉は、やっぱり幸せそうだ。
相談事なんて嘘っぱちか、やっぱり…考えていた通りの事なのかもしれない。
「迎えに行って貰ってありがとう。迷子になってたら大変だから」
「どういたしまして」
ソファを勧められ、ゆったりと座る佐藤の向かいに遠慮がちに座る。何度座り直しても居心地が悪く、落ち着く事ができない。
「…ぇ…と……」
何か会話を…と思うが、先程の事が頭の中をぐるぐると回り、握り締めた両手に汗が滲んだ。
「お姉さんはいつまでも子供扱いしたいみたいだね」
キッチンにいる姉に聞こえないようにこそっと言い、微笑を見せる。
「あはは、もうすぐ社会人なんですけどね」
「卒業後は?もう決まってるの?」
「まだ…決めかねてます。とりあえず就職は今のバイト先に決まってますけど」
「お義父さんの会社…継がないのかい?」
いきなり言われた言葉に、苦笑が漏れる。
「お義兄さんが継いでくれるんでしょ?」
「君が継ぐなら俺は…」
「継ぐ気なんてないです。親父ともそれで話はついてますから」
継ぐ気もなければ、継がせる気もない。
「そうか…気が変わったら、言ってくれないか?」
「ないですよ、観念して継いで下さいね」
そう話が切れた頃、姉がお盆に様々な料理を乗せてやってくる。
色合いも考えられた、美味そうな料理だった。
「料理できたの?」
「急いで習ったの!一応胃薬も用意してあるわよ?」
悪戯っぽく笑う姉の幸せそうな姿に、安堵と同時に苛つきを覚えて苦笑する。
「ビールも用意してあるの。圭吾は飲むでしょ?秋良さんはどうする?」
「付き合うよ」
佐藤はそう言うと、お盆からグラスを取ってオレに手渡してビールを注いだ。
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