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「まだ、記憶あやふやな所があるの?」 「………さぁ。あまり喋りたがらないから」  視線を逸らす姉に、違和感を感じながらキッチンのテーブルに向かい合って座る。  目の前には崩れてしまったケーキがと紅茶が置かれていた。 「酷い事になってるね、ホントごめん」 「食べちゃえば一緒、気にしないの」  姉好みのフランボワーズを使ったケーキは見事にひっくり返っている。それをフォークで突きながら、姉は軽い沈黙の後に口を開いた。 「………あのね」  そう言われ、覚悟を決めて顔を上げる。  おめでただろうと何だろうと、オレは笑顔で祝福する気でいた。  けれど… 「掃除してて、見つけたの」  コトン…と、姉が何かをテーブルに置いた。 「これ」  テーブルに置かれた物に、はっと息を飲む。  銀色をした、シンプルなデザインの指輪が、鈍い光を受けてオレと姉との間に鎮座する。 「…どう…したの?」  微かに声が上ずったような気がして、そっと盗み見た顔が強張っている様に見えた。 「見覚えない?」 「……」 「圭吾がしてる指輪と、同じ物よね?ねぇ…圭吾と…秋良さんって……以前から知り合い?」  知り合い…と、オブラートに包んでくれてはいるが、姉が指している知り合いと言う部分が、恋愛を交えての付き合いがあったかどうか尋ねているのは明白だった。

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