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 笑うのに失敗した顔で更に続ける。 「…私を見てね、以前してたみたいに、もっと髪を短くして茶色にはもうしないのかって」  テーブルの下で握り込んだ手に嵌る固い感触を感じた。テーブルの上に置かれたリングの片割れはここにある。 「私、短くした事なんてない…うぅん、長い髪の私しか知らないはずなのに…」  姉の目が、今は黒くしてあるオレの髪の毛を見ていた。  その目はどこか泣き出しそうで、オレが願った幸せそうな新妻の表情ではない。 「貴方が以前探してた佐藤って…秋良さんの事?」  沈んだ顔を見たくなくて目を逸らす。  オレは、また姉の幸せを邪魔してるのか?  置かれた指輪に手を伸ばし、その中を見る。  赤い石と共に、『keito』の文字が見えた。  一縷の望みを託してそれに縋りつく。 「『ケイト』の指輪なら、持っててもおかしくないよ」 「え?」 「このデザイン流行ってるの知らないでしょ?姉さんこう言うの、疎いから。中見てみて」  指輪を手渡すと、姉はその内側を覗き込んだ。 「ちなみに、その指輪のブランドは『ケイト』ね。男にも人気のあるの」 「ブランド名だったんだ…」  ほぅ…と漏れた声を聞いて、更に畳み掛ける。 「日本で一番多い名字知ってる?」 「…佐藤」 「オレの言う佐藤は大学の佐藤ね」 「…ぅ」 「髪の事にしてもさ、式で使った中に小さい頃の写真あったじゃん。ボブくらいの時の写真」 「あった…かな?」 「あったよ。小さい頃は赤毛で、よくハーフに間違えられてた頃の奴。あれ見たんだろ?」  披露宴で流されていた写真には小さな頃の写真が数枚あった。

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