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自分なりに、記憶のない期間に出会った誰かを探そうとしてみた。けれど携帯電話は事故の際に壊れてデータは取り出せず、それまで使っていたスケジュール帳も事故の際の汚れで読めたものではない。
微かに読める部分の日付の横に、小さなチェックマークが入っているくらいだ。
日記の一つでもつけていれば違ったのかもしれないが、生憎と習慣付かなかった。
「…ケイト」
指先に挟んだ指輪に彫られた名前を呼んでみる。
どんなに感情を込めて読んでも、空虚感は否めない。
これがその誰かとの間に交わした指輪なのだろうか?
そんな深い中だったのだとしたら…写真の一つも残っていないのはどう言う事だ?
そして、何故連絡を取ろうとしてくれないんだろうか?
上手くいっていなかったかつての彼女との冷えた付き合いを思い出し、その誰かともそんな状態になってしまっていたのではないかと気付く。
『これで良かったんじゃないか』
そう言われた言葉がぐるぐると頭を巡り始める。
「オレと…誰かとの……泥沼でも知ってるのか…?」
泥沼だったのだとしたら、なるほど、確かに良かったのかもしれない。
暗い部屋の明かりを鈍く反射する指輪を封筒に入れて机の奥に仕舞い込む。
もうこれの事は、忘れよう。
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