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スタッフルームから戻った谷が、まだいたのか…と言う表情でこちらを見ながら近付いてくる。
「彼は?」
「寝てますよ。最近、寝不足だったせいでしょう」
そう意味ありげに上げられた片眉を不愉快に思う。
何が言いたい?
「そのくせ、毎日しないと拗ねるんです」
「何が…」
「ナニ?言わないと分かりませんか?」
温くなってしまった烏龍茶を新しい物と替えながら、谷はそう言ってオレの目を覗き込む。
「…あんただろ。ケイの前の相手は」
「…」
咄嗟にYESと答える事が出来ずに口を開きかねていると、こちらを睨む目に力がこもった。
「男と付き合っていたなんて言えないか?」
「ケイトの事を隠したりなんかした事はない!」
ばんっとカウンターを叩いて立ち上がる。
そうだ。
オレは、ケイトの事を隠した事はない。
だからこそ、父はあの時オレを睨んでいたんだ!
男と親しげに話すオレを…
ふら…とカウンターから離れる。
「会計を…」
「いりません」
きっぱりと言われ、力なく肩を竦めて店の扉をくぐって外へ出る。少しひんやりとし始めた夜の空気を吸い込んで携帯を取り出した。
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