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慌てて作ってくれた肉じゃがを口に入れ、その味に自然と顔が緩む。
「小夜子さんとはどう?」
「どうって…うまくいってるよ」
喧嘩は…してない。
「ねぇ孫とかは…」
「……授かり物だから」
そう言うと、母はちょっと残念そうに唇を尖らせてみる。
「でも…よかった……本当に…」
小さく呟かれた言葉に含まれた意味を考えて、思わず箸を置いた。
母は、やはり知っているのだろうか…
「お?来てたのか」
体から湯気を立てながら現れた父に向き直る。
「…ええ、久し振りに母さんの手料理が食べたくなって」
そう言いながら、母が用意したビールをグラスに注ぐ。
「小夜子さんとはどうだ?」
「うまくいってるよ」
「……そうか……ほっとした」
父のその一言の重さが胸に突き刺さる。
ほっとした…
自分は両親に、どんな思いをさせたのか…
手帳に挟んだメモを思い出しながら箸を再び動かし、胸の内で呟く。
………あのメモは…捨てよう
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