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「………あの…ケイト?」
久しぶりにケイトに電話をかけた。
仕事が非常に忙しかった事もある。
けれどそれ以上に、精神的に参っていた。
連日に及ぶ父との口論と、進められていく養子縁組の話。
恩を裏切れず、だからと言ってケイト以外の伴侶など考えられなかった。
参れば参るほど、ケイトに会って、その体を抱き締めたかった。
けれど、きっと壊してしまう…
何度も何度も彼を抱き、その中に自分の物だと言う証を注ぎ込んでも、満足出来なかった。
もっと欲しくなる。
彼を繋ぎ止めていたかった。
彼が、どこか一歩引いて、いつでも別れられるような雰囲気でいるせいかも知れない。
不安で堪らなかった。
壊して自分のだけの物になるのなら…壊してしまうのに!!
久しぶりに聞いたケイトの声は微かに掠れていて、一瞬喘ぎすぎた時の彼の声を思わせた。
ぞっとなりながら、嫌な考えを振り払うように泣いていたかと尋ねると、風邪だと答えが返る。
連絡しなかった自分の非を棚上げにして、連絡してこなかったケイトに対して怒りが沸いてきた。
「今からそっち行くから」
そう言って駆け出しながらも、オレは一抹の不安と戦っていた。
風邪に良さそうな物を買い込み、何度も送っていったレトロなアパートに行く。見る度に人が住んでいると言う事に驚くそのアパートを上がり、チャイムを押す。
「はやっ!!」
薄い扉の向こうから聞こえる声は、やはり掠れていた。
『はやっ!!』の言葉に、もやもやと気分が悪くなる。
早いと都合が悪いのか?
むっとしていると、鼻先ギリギリをかすって扉が勢い良く開け放たれた。
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