119 / 312

42

「なんて格好で出てくるんだ…」  上半身剥き出しの無防備なまま飛び出してきたケイトに、面食らう。  久しぶりに見るそのほっそりとした体に、他の男の跡が無いか祈りながら見つめる。 「オレじゃなかったら、どうするんだ?」  白いままの体を見て、ほっと安堵すると同時に、その無防備さに苛ついた。 「どうもしねぇよ」 「…来たのが他の奴だったら、乱暴されるかもしれないだろ!?」  ぷっと吐き出したケイトは、風邪を引いているようには見えない。  また、むくりと猜疑心が頭をもたげる。 「まぁ、入れば」 「ああ」  そう背中を向けるケイトの体が、いつにも増して細く見えた。 「……痩せたな」 「まーな。食欲なかったし」 「一応買ってきた」  持っていた袋を渡すと、嬉しそうな顔をして受け取ってくれる。  久しぶりに見るその笑顔で、ここ最近の鬱々とした悩みが軽くなった。 「熱は?」 「え?あ、37度後半かなぁ」  いつもひんやりとした彼の体の事を考えると、高い様に思う。 「なんで連絡してこなかった?」 「佐藤は仕事で忙しいだろ?小さな子供じゃないんだし…それに、悪いだろ?心配させたら」  心配させたら?  頼られていないその事実に、頭を殴られたような気分になり、自然と眉間に皺が寄る。 「…」 「な、なんだよ。一応気ぃ遣ってんだよ…」  身を引くケイトの腕を掴むと、ほわっとした温もりが伝わり、まだまだ熱があるのだと言う事が分かった。  ほっとすると同時に、その手にオレが嵌めた指輪がない事に気付く。  何故? 「…いっ」 「指輪…どうしたの?」  腕をきつく掴みすぎているのは分かっていたが、緩める事が出来なかった。

ともだちにシェアしよう!