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箱に刻まれた『Kete』の文字を見て、ケイトがはっと目を見開いたのが分かった。
「君と同じ名前のブランドがあるって聞いたから…気に入らないかな?」
ケイトに似合いそうな、シンプルなデザインの指輪を取り出して見せる。
「…ば…ばっかじゃないのか!?」
拒否の言葉を聞きたくなくて、急いで言葉を紡ぐ。
「サイズは合ってると思うんだが…」
「そう言うんじゃなくて…」
断りの言葉を探している彼の心中に気付かないような振りをし続ける。
にっこり笑って、彼を見た。
「……なんでこんな高そうなもん…」
声の中に躊躇いを感じて、もう一押ししてみる。
「受け取ってくれるかな…?」
受け取る事を拒否されたら、オレはどうしたらいいのか…
「…」
ケイトが他の男の元に行くなんて、考えられなかった。
もし、そんな事になるくらいなら……
ことん
一度指に嵌めていた指輪が外されてテーブルに置かれる。
受け取ってもらえないのか?
なら…いっそ…
体格差はある。
抵抗されても抑え込める自信はあった。
「…さっき前彼が言ってた事聞いてたろ?オレ、ヤれればそれでいいって人間なんだよ。今までさんざんいろんな男と関係持ってきてんだぜ?……そんなんでいいの?」
申し訳なさそうに、上目遣いにこちらを見やる彼が、愛しくてたまらなかった…
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