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「答えろよ」  低い、絞り出すような声に背筋が冷たくなるのを感じた。 「…部屋で、話そう」 「わかった…」  その手を取ろうとするのを、また払われる。  触れさせて貰えない…  すぐ傍にいて抱き締められる筈なのに…  先程通ってきたエントランスを逆戻りする。  エレベーターを待っていると、聞き覚えのない着信音が響く。 「あっ…」  隣で上がった声にケイトを見ると、後ろのポケットから携帯を取り出している所だった。「悪ぃ…」とだけ言うと、少し離れて会話を始める。  静まり返ったエントランスでは聞こうとしなくともケイトの声がこちらに届いてしまっていた。 「ごめん、ちょっと店行くの遅くなるから。………ん」  少し口を噤んだ後、更にこちらに背を向けるようにして囁く。 「恭司のこと、大好きだってば」  チン…と鳴ったエレベーターの音に掻き消されるようにして届いた声に、全身が震えた。 「悪いな。行こうか」  オレを置いてさっさとエレベーターに乗り込むケイトの項に、薄い痣が見える。  以前、つけようとして怒られた事のあるものだと、一瞬で分かった。 「…」  目の前が眩む。  視界が緋色に塗りつぶされるような錯覚に陥り、思わずエレベーターの壁に手を突いた。  ケイトが他の男の物になっているのが許せなかった。  確かに彼の事を忘れてしまっていた。  けれど故意じゃない…  何故…ケイトは待っていてくれなかったんだ!! 「け…」  ケイト?圭吾?どちらで呼ぶか判断がつきかねた時、指定の階に着いたエレベーターの扉が開いた。さっさと歩き出す彼の後を追いかけ、部屋の扉を開ける。

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