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ひんやりとした室内の空気に、ケイトは戸惑っているようだった。スリッパを出して上がるように促してリビングへと向かう。
電気をつけると、幾分冷たさは和らいだような気がしたが、どこか寒々しさが残る。
「何か、飲み物を…」
「いらない」
「…」
ドカ…とソファーに乱暴に座るケイトの向かいに、ゆっくりと腰を下ろす。
「ケイト…」
「圭吾だ」
「…」
「いろいろ思い出して…」
「関係ない」
関係ない?
「俺は、あんたと姉さんの事で来たんだ。記憶が戻った事が原因とか言うなよ、下らない」
下らない?
「男と女の事で俺にとやかく言われたくないのかもしれないけど、弟の権利だ、言わせて貰うぞ」
弟?
「姉さんは何も言わなかったけど…あんた何したんだ?」
何?
「姉さんのどこが気に入らないんだ!?」
どこ?
「…どこ……だって?」
そう呟いて一気にテーブルを乗り越え、驚愕の表情を作るケイトを押し倒す。
「っ!?」
「全部っ…全部だっ!彼女はケイトじゃない!それが気に入らないっ!!」
はっと見開いた目が、恐怖を滲ませてこちらを見上げる。
ソファーに広がった黒髪に手を這わせ、その柔らかな髪質を楽しむ。なだらかな曲線の首筋に指先を置くと、びくりと身を竦ませた。
思い出の中にある通りの感度が応える。
「…っ。お前、何言ってんだ?…ちょ……離せ…」
「彼女がケイトなら抱きもした!彼女がケイトなら愛する事も出来たっ!」
首筋を通って、鎖骨に触れる。
ここは皮膚が薄いせいか、すぐに赤く染まる場所だった。
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