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「…ケイト、こっちを見てくれ」 「い…いやだ…」  合わせない視線を合わせるために、その小さい顔を両手で包み込む。 「オレを見てくれ」 「…あんたは…俺を見てくれなかった」 「見てた!ずっとずっと…見てた…」 「あんたは姉さんと、幸せそうに笑ってた」 「でも…どこか違うって思ってた…何が違うかやっと分かった」  もう一度口付けると、ケイトは微かに唇を開いて受け入れてくれた。 「ケイト、愛してる」  柳眉が歪む、眉間に皺が寄り、ケイトはゆっくりと首を振る。 「………駄目だ。俺は…姉さんが大事だ。…その姉さんは…あんたが好きなんだ」 「幾ら好かれても、オレの気持ちはケイトにしかない」  ケイトの口から自嘲気味な笑みが零れた。 「姉さんの笑顔を守りたいんだ。だから…あんたとの事はおしまいにする」 「頼む、オレを見てくれ」  ソファーから立ち上がろうとする手を掴んで引き寄せる。 「オレの名前を呼んでくれ」  腕の中の頭が、左右に振られる。 「俺は姉さんが一番大事なんだ」 「ケイトがいなきゃ…駄目なんだ…」  拳がオレの胸に振り落とされ、どんっと言う衝撃が体に響く。 「駄目でもなんでも、無理なんだ」 「無理じゃない」 「無理だ」  その言葉とは裏腹に腕の中から逃げようとはしない、じっと頭を胸につけ、踞るようにしている。 「……ケイト…好きだ」  ずず…と鼻を啜り上げる音が響く。 「…駄目だよ、もう俺、彼氏持ちだし」  腕の中からもぞもぞと抜け出そうとする体を押さえ込み、項に口付ける。 「なっ!?何やってんだっ!?」  きつく吸い付いては、少しずらしてまた吸い付く。 「おいっ!?止めろ!!何考えてんだっ」  抵抗を押さえ込むのは造作もなく、項いっぱいに赤い花びらを散らしていく。  吸い付く度にびくびくと 体を跳ねさせるケイトを愛しく思いながらその痕に舌を這わす。

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