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 河原の実家近くの喫茶店で秋良と小夜子が向かい合っていた。  何か言いたげな小夜子の母親に頭を下げ、秋良が家から連れ出したのだった。 「すまなかったと…思っている」  そう切り出し、秋良はまっすぐ彼女を見て自分はED(勃起不全)であると、まことの様に告げる。 「会社の重圧のストレスだと思う。治療にも通ってはいたけれど…成果のないままで……この間はつい八つ当たりをしてしまった。本当に、悪かった」  そう秋良が言うと、小夜子はやや頬を赤らめて「そうだったんですか…」とぽそりと返した。 「病状が病状なだけに、話すのも躊躇われて…」  あまりにも唐突で突飛だったかと秋良が顔をしかめていると、ぽつん…と小夜子が息を吐いた。 「……もっと早く教えて下さっていれば、もっと早く一緒に悩む事ができたのに…」  なじる事も、怒鳴る事もせずに小夜子はそう言って微笑む。 「…怒らないのか?」 「どうしてです?嫌われてないと分かっただけで十分」  そう安堵の表情を見せる小夜子に、秋良は重苦しい罪悪感を感じながら曖昧に頷いて見せる。 「嫌ったりなんかするはずないよ」  揃いの指輪を嵌めた手を取られ、小夜子はますます顔を赤らめてくすぐったそうに目を伏せた。  その僅かな動作にすら圭吾の影を見つけてしまい、秋良は照れているフリをしながら手を離す。 「俺達の家に、帰ろう」 「…はい」  素直にはにかみ頷く小夜子に対し、秋良は罪悪感を抱えながらその店を後にした。

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