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 その足で出勤すると言う秋良と別れ、小夜子は2、3日空けただけの我が家へと帰りほっと一息吐く。  実家が気楽…とは言え、一度家を出た身としてはどこか気持ち的に肩身が狭く、何かと気を使ってしまっていた。 「ええっと…」  まずはひんやりとしている部屋のエアコンをつけようとする。  いつもよりも寒く感じるのは、この部屋に人がいなかったからなのか… 「…リモコンは……」  探すが見つからず、両手で体を擦りながら少しでも暖をとる為にショールを先に探す事にする。  愛用のそれは、いつも椅子の背に掛けていたはずだった。 「…」  ない?  呟いて、リビングを振り返ると、小さな違和感が胸に突き刺さる。  何が…と言う訳ではない。  ローテーブルはいつもの位置だし、ソファーだってなんの問題もない。  なのに…  居心地の悪さを感じながらソファーに近寄ると、その下にリモコンを見つけた。  拾おうと身を屈めるとテーブルとソファーの下に敷かれた絨毯に痕が見える。家具を動かさなければ見る事のない絨毯の毛が寝てしまっている部分に、小夜子の違和感は更に増す。  指先でその痕を追いながら、気持ち悪さに眉をしかめる。 「誰か…来てたのかしら?」  さらりとした黒髪を耳にかけながら、少しずつずれているテーブルとソファーを交互に見やる。 「…」  食器を動かした跡はない。  来客用のカップも、小夜子自身が棚に置いた時のままだった。 「……気のせいかしら」  あんな事があって気が高ぶっているのかもしれない…と自分に言い聞かせてソファーに座ると、座面と背凭れの隙間にキラリと光る物が見えた。

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