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「何勝手な事してんだよ!」  苛々とした声を上げ、通話を終えた携帯電話を恭司に向かって投げつけると、圭吾は堪り兼ねて怒鳴り付けた。 「人の電話に勝手に出たり、中身チェックしたり!そんなに俺が信用できねぇのかよっ!?」 「……」 「近頃じゃあ何処に出掛けて何時帰るかまでいちいち…いい加減にしろよっ」  床に転がった携帯を拾い上げると、恭司はそれを裏返したり擦ってみたりして壊れてないかを確認してから圭吾へと差し出す。 「信用してるとか…してないかとかじゃない」  受け取ろうとした圭吾の腕を掴んで引き寄せる。 「…ケイの中に、俺が本当に居るのか分からないだけだよ」  胃の縮まるようなその言葉が胸をひんやりと冷やす、こちらを見据える恭司に笑い返そうとした。  作りきれなかった笑顔が、くしゃりと歪む。 「俺の…」  嘘を呟いていると、圭吾自身が痛感しながら続ける。 「俺の中にいるのは、恭司だけだよ」  虚ろにこちらを見詰め、自嘲気味な笑みを浮かべた恋人の頬に手を当てて繰り返す。 「俺には、恭司しかいないよ」  秋良の顔を思い浮かべながら、また一つするりと嘘を紡いだ。

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