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 ぱたんと音がして、恭司ははっと目を開けた。  隣を探り、そこに誰も居ないのが分かった途端飛び起きる。 「ケイ!?」  気持ちの良かった微睡みから、一気に冷水に浸けられた気がして、身震いしながらシャツを着て玄関へと向かう。  圭吾の靴がないのを見て、上着も着ずに外へと飛び出した。 「ケイ…」  ふ…と漏れる息が白くなることはなかったが、まだ肌寒い空気にぶるりと体を震わせる。  一階に到着しているエレベーターを追いかけて階段を駆け降り、マンションの前に飛び出すと、左手の曲がり角を曲がろうとする圭吾が見えた。 「………」  駆け寄り、声を掛けようとしたのを止めて、恭司はそっと距離をとって歩き始めた。  圭吾が立ち寄った店の傍にできるだけ目立たないように立ち、圭吾が出てきたらそっと距離をとって歩き出す。  見つからないように、細心の注意を払って後をつける。  途中、幾度も声を駆けようとしたが、何かが恭司に囁きかけていた。  ──誰かと会うんじゃないか…?  違う、何かの用事だと言い聞かせる自分と、その誰かを探り当てたい気持ちの間で揺れ動き、結局声を掛ける事はできなかった。  一人店に入っては物色し、また違う店へと入る。  それが何軒目かになった時、恭司はこんな事をしている自分が馬鹿馬鹿しく思えて息を吐いた。 「…何やってんだ……俺…」  踵を返そうとした時、嬉しそうに紙袋を片手に出てくる圭吾の姿が目に入って足を止めた。  柔らかに口許に微笑を浮かべた楽しげな表情を、最近見た記憶がなかった事に気が付いて息を止める。  店から出た圭吾は、どこか足取りも軽く駅前へと歩いていく。  その軽やかさに、腹が立った。

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