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 その柔和な笑みに、この所常に付き纏っていたぎすぎすとした空気がないのを見て取り、ほっと笑い返す。 「なんて言って欲しいんだよ」  唇を尖らせ、わざとつっけんどんに言う圭吾に恭司が破顔する。 「そりゃぁ…決まってるでしょ」  赤い耳朶を甘噛みしながら息を吹き込む。 「な?」 「…ん。その……恭司に、気持ち良く…して欲しい…」  自分の強請る言葉に照れたのか、圭吾は「今のナシ!」と喚きながら布団の中へと潜って行く。 「もー!!最中は平然とねだるクセに!」  ベッドの上に出来たこんもりとした山を優しく叩きながら苦笑する。  そっと端を捲ると肋骨の形の見える脇腹が見え、恭司はそれに口付けた。 「出ておいで、イイコトしよ」  骨に沿って舌を這わして小刻みにうねらせると、もぞりと布団が動いて恥ずかしさの為か涙目の圭吾がこちらを向いた。 「…ん」  への字に曲げた口でそう返事をすると、笑いを堪えようとする恭司の膝の上へと跨った。 「キスしよっか」  垂れ目を細めて言うと、圭吾は小さく頷いてその唇に吸い付く。 「ぅん…恭司…」  目を閉じて恋人の与えてくれる快感に追いすがる圭吾には、恭司が一瞬、苦悶に眉間に皺を寄せた事に気づく事が出来なかった。  情事後の深い眠りに就いた圭吾のうなじに唇を寄せる。 「ケイ…」  はっきりとついたキスマークを親指でなぞり、自嘲気味な笑みを浮かべてそれを見やった。

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