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「お料理、上手ですね」 「ありがとうございます、以前は全然出来なかったんですけど…」 「お茶も無理だったよね」 「もう!」  小夜子の手料理に舌鼓を打ちながら、恭司と小夜子の会話は盛り上がっていた。  それに時折相槌を打つように、圭吾と秋良が言葉を添える。 「圭吾の髪、どこで切ったの?」 「うん?姉さんも切るの?」 「少し軽くしようと思って…」 「じゃあここの招待券上げるよ、俺もこれで安くしてもらったし」   財布から取り出したチケットを小夜子に渡し、記載されている地図を指先ながら店の場所を説明する。 「…ぅ……大体は分かったわ」 「大丈夫かなぁ…この辺入り組んでるよ?」 「迷ったら周りの人に聞くわよ。…それより、お代わりはいる?」  そう尋ねられ、圭吾はスープ皿を持って立ち上がった。 「このスープが美味いね。熱いから、自分で入れて来るよ」 「危ないわよ」 「子供じゃないんだから」 「お客様なのに…」 「身内だよ」  苦笑してキッチンへと向かう。  話が盛り上がっているとは言え気まずさは消えておらず、時折無性にこの場から飛び出したい気にさせていた。  それを解消する為に何かしらの口実を作っては立ち上がり、一息つく。  それは秋良や恭司も同じ様で、トイレや喫煙などと言っては頻繁に席を立っていた。

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