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「あっ」
シャツを脱いだ瞬間に聞こえた短い声に、秋良ははっと振り返った。
「やっぱり火傷が…!?」
「ちが…っ!!…その…服を違うのに替えてもらえないですか?」
「え?あ…ああ、そんなに気に入らなかった?」
背を向け、体を庇おうとする圭吾の背中の白さに眩暈を覚えながら、違う服を探す。
「いえ……そうじゃないんですけど………その、ハイネックみたいな服があれば…」
「ハイネック?」と聞き返しながら、その形の服を掴んで渡す為に近付いた。
「あの、ちょ…近寄らないで……」
圭吾は一度脱いだ服をもう一度着ようとしていたが、濡れて張り付く服は思い通りに着直す事ができず、もたもたと首の周りに張り付く布と格闘している様に見える。
戸惑い、どうしようかと考えあぐねた結果、秋良は濡れて冷たくなったそれを引っ張った。
「取った方が早いだろ」
「あっ…」
「下心はな…ぃ」
言いかけた言葉が尻すぼみになり、見開かれた目が圭吾の体の上を這う。
白い滑らかな曲線を描く肌にぽつりと主張する二つの珊瑚色の蕾、ほっそりとしたままの腰の浅い括れに目をやっていると、羞恥に顔を赤くした圭吾がハイネックのシャツを奪い取る。
「ありがとう…」
首筋まで赤くしながらぷい…と顔を背けた瞬間、秋良の手が圭吾の顎を捉えた。はっと身を硬くする圭吾を上向かせると険しい表情で見下ろす。
「これ…」
秋良の言葉が何を指すかを一瞬で悟った圭吾は、その手を振り払って喉元を押さえた。
「こ…れは…」
「隠せてない」
後ずさる圭吾を捕まえて深く眉間に皺を寄せたまま、搾り出すように呻く。
視線は圭吾が押さえた部分から動き、うなじへと移動する。
そこには咲き終えた花弁の様に散らされたキスマークが、濃淡さまざまに浮き上がっていた。
その上を、忌々しそうに秋良の視線が行き来する。
「はな…せ…」
「…誰と付き合おうと…止める権利はないけれど……頼むから、他の男との事を見せ付けないでくれないか?」
ぎりぎりと音がしそうな程噛み締めた奥歯の隙間から、唸る様に言って顎を掴む手に力を込める。
「………俺は…………まだ、君をあい――――」
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