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カチャン…と響いた小さな扉を開ける音に二人して飛び上がる。
「何…してるの?」
慌てて手を離す秋良を見ながら尋ねる小夜子の声音は濃い不審を滲ませた怪訝なものだった。
「火傷…」
圭吾が弾かれた様に顔を上げる。
「大した事ないのに義兄さんが薬塗ろうって言うんだ!」
「やっぱり火傷してたの!?」
「少し赤くなってるだけで痛くもないんだ…平気なんだから、薬なんて必要ないって姉さんからも言ってよ」
細身の圭吾には大き過ぎるシャツを着ながら、憤然として姉に詰め寄った。
小夜子がちらりと後ろを見やると、苦虫を噛み潰したかの様な秋良が頷く所だった。
「心配だから…」
「そうね、私もちょっと心配だわ。お医者様に見てもらう?」
「どれだけ過保護なんだよ!子供じゃないんだから!」
柳眉を下げ、弟を見上げる小夜子に秋良が告げる。
「じゃあ、薬だけでも塗ろう。薬局行って来る」
ぱっとシャツを被ると、「私が行きます」と言う小夜子の言葉に振り向きもせずに玄関を出て行った。
それを見送り、ふぅ…小夜子が溜息を吐く。
「今日の秋良さん…ちょっと機嫌悪いのかしら…」
「俺達が長居しちゃってるからね、せっかくの休みなのに…ごめん」
「きっと違うわよ!お仕事が大変なのかもね」
うちの会社に移る準備をしているらしいから…とどこか他人事の様に呟くと、小夜子はぱっと圭吾を見やった。
「やっぱり秋良さんの服は大きいわね」
「義兄さん、大きいからね」
「…私の服を着る?」
その茶目っ気を含んだ言葉に、「無理無理!」と笑って応える。
圭吾は男としてはかなりの細身だったが、それでも小夜子の服を着る事は無理だった。
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