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「何考えてるんだっ!!」  近頃、恭司との会話にこの言葉ばかりを使っている気がして圭吾はこめかみを押さえた。  恋人同士なのだからある程度の拘束や嫉妬などは我慢できていたが、ここ最近の恭司の行動は分別のある大人のそれとはかけ離れ始めていた。 「場所を考えろよ!姉さんの家なんだぞ?」 「そうだな。…あいつの家だな」 「っ!」  『あいつ』の部分で恭司が表情を険しくさせるのを見逃さなかった圭吾は、その胸倉を掴みたい気持ちを既で堪えた。 「…珈琲でよかったかしら?」  香ばしい匂いのするカップを盆に乗せた小夜子が現れた為、言い返そうとして開いた口を閉ざしてそちらへと向き直る。そして姉の持つ盆からカップを取ってはテーブルへと並べた。  小夜子の視線が、圭吾の指へと注がれる。 「……もうしてないの?指輪」 「え…」  カップを運ぶ傷跡の残る左手を見ながら、小夜子がそう尋ねた。 「恭司さんに買って頂いたって言ってなかった?」 「指輪?」 「ええ、銀色の…シンプルな……えぇと…なんて言うブランドだったかしら?」  恭司の持つカップがカチャっと音を立てる。  その気配を察知して、それ以上その会話を続けさせまいと圭吾は話題を変えようとした。 「何だったかな?そう言えば、買ってきたケーキは…」 「俺じゃないですよ」  言葉を遮る恭司に、二人の視線が集まる。  圭吾は小夜子に見えない様に恭司の脇腹を肘でつついたけれど、それを無視した恭司が続ける。 「自分がしないから、指輪は贈らない様にしてるんです」  怪訝な顔で小夜子が首を傾げ、表情を固くした弟の雰囲気を感じ取って曖昧に頷く。

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