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 不自然な沈黙のあと、くぐもるような「ただいま」と小さな言葉が続く。 「……秋良さん、帰ってきたみたい」  玄関の方へ顔を向けた小夜子が、誰に言うともなく呟くのと同時に秋良が顔を覗かせる。 「買って来たよ」  そう言い、真っ直ぐに口を引き結ぶ秋良の表情は硬く、圭吾は思わず自分の口を押さえた。  聞かれたのだろうかと背筋が凍る。 「ケーキの準備、しますね」 「俺はコーヒーだけにするよ、お腹が一杯なんだ」 「そう?わかったわ」  そう答え、小夜子がキッチンに向かうのを見やってから秋良は圭吾の傍に立って袋から幾つかの薬を取り出した。 「どれがいいのか分からなくて…」 「………いえ、何でも。…痛くもないし…」  真っ直ぐに秋良の顔を見る事が出来ず、圭吾はテーブルに並べられて行く大小の薬の箱に目をやる。 「いや、ちゃんと塗っといた方がいい。………折角、綺麗な肌をしてるんだから」  ぎょっとして顔を上げるが、秋良の視線は圭吾にはなかった。  圭吾の頭上を越え、隣に座る恭司の方へと注がれている。 「そうだな。触り心地いいもんな。今夜、俺が塗ってやるよ」  眉間に深く皺を寄せ、奥歯を噛み締めて答える恭司を慌てて振り返った。 「ちょ…お前ら…っ」  かちゃん…と食器の音に三人がはっと我に返る。  盆の上にケーキとコーヒーカップを乗せた小夜子が小首を傾げる。 「……どうしたの?」

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