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「長い事鳴っていた様に思います…お仕事の事かもしれないし、少し出る時もきちんと持って行って下さいね!」 「ん…すまない」  注意され、謝りながらソファーへと戻る。  黄色く点滅を繰り返す携帯電話の画面を見ると、誠介の名前とメール受信の知らせが表示されていた。 『時間作れ。出世祝いに呑むぞ  お前の奢りでな』  最後に付け加えられた一言に思わずぷ…と吹き出す。 「…あいつらしいな」  学生時代から変わらないそのらしさに、少し救われた様な気がして微笑みながら電話を掛ける。何時に会うかどこの店にするのか等をやり取りして通話を終えると、テーブルを拭き終わった小夜子に声を掛けた。 「月末の休み、呑みに行く事になったから」 「はい…ええっと…」 「以前酔い潰された事のある奴だよ、覚えてないかな?…きっとまた呑まされるだろうから、その日は先に休んでくれるかな」  くす…と小夜子が笑みを漏らす。 「呑まされるなら尚更、起きていた方がよさそうですね?」  ビール一杯で泥酔した以前の事を思い出しているのだと言う事が分かり、秋良は恥ずかしそうに頬を掻いた。

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