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「あつぅ…」
鏡に映った自分の顔を見てぎょっとする。
痣こそ出来てはいなかったが、繰り返し打たれ続けた頬は熱を持って腫れていた。
「………」
昨日の名残のせいで言う事を聞かない体を支えながら部屋へと戻ると、恭司が店へ出掛ける準備をしている所だった。
「……………」
声を掛けたくなくて、無言でクローゼットの方へ向く。
「…今日は、店はいいから」
「出…」
「その顔じゃ、無理だろ」
「……冷やせば…開店までに引くよ…」
よたよたとクローゼットに手を掛けると、背後から近付いた恭司が戸に手を置いて開くのを遮った。
「………」
グイっと力任せに引くが、恭司の手で押さえられている扉は開きそうにない。
仕方なくクローゼットは諦めてチェストの方へと振り返ろうとして身を強張らせる。
「…な…なんだよ…どけ」
恭司の視線がこちらに向くだけで、圭吾は背筋に冷たい物が走るのを感じ、ぶるりと身を震わせた。
昨日自分に手を上げた男に傍に来られ、ぎゅっと拳を作る。
その明らか過ぎる自分に向けられた反応に、恭司は息を詰めて一度きつく目を閉じた。
「………昨日は…悪かった……」
続ける先を捜して言葉を区切り、唇を舐めて湿らせる。
「圭吾…ごめんよ」
クローゼットの扉の前から逃げる事が出来ず、圭吾は俯いて小さく頷く。
「…愛してるんだ……」
熱く耳元で囁かれた言葉が圭吾の脳を揺さぶり、怒鳴りつけてやろうと意を決して上げた視線の先に、涙を滲ませた恋人の顔を見つけて踏みとどまった。
「………………うん…」
もう一度はっきりと頷き、圭吾は恭司が手を伸ばしたのを受け入れる。
痛みと熱を持った頬を包み込み、恭司が優しくキスをし、そっと壊れ物を扱うかの様にその茶色い髪を梳く。
「圭吾…愛してる…」
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