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「あら…」  机の上を見ると、秋良にしては珍しくペーパーナイフが出されたままになっていた。  薄い金に光るそれを取り上げ、机の引き出しに手をかける。  そこでふとある物を思い出して手を止めた。 「…あっ…ええと…」  スリッパをパタパタと鳴らし、キッチンへと向かう。  以前拾い、渡さなければと思いながら忘れてしまっていた物を引き出しから取り出す。  ハンカチに包まれた銀色の輪を取り出すと、指先を軽く通して日に翳してみる。 「ふふ、やっぱり秋良さんのは大きいわね」  好感の持てるシンプルなデザインは、確かに秋良の好みそうな物だと考えながら眺め、機会があればこのブランドの商品の置かれている店に行きたいとも思った。 「『keito』よね」  中を見て確認しながら書斎へと戻る。  以前秋良がそこにこの指輪を収めていた。リビングのソファーの背凭れに挟まっていたこれを、秋良は探していたかもしれない。  つい忘れてしまっていたとは言え、気に入りの物を直ぐに返せなかった罪悪感を感じながら、申し訳ない…と思いつつ机の引き出しを開けた。 「これ…え?」  ぽとり…と手の中から指輪が零れ落ち、飴色の机の上を転がってペーパーナイフに当たってチン…と小さな音を立てた。  引き出しの中、ひっそりと収められている銀の輪に目をやり、次に机の上を転がった指輪を見詰める。

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