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「どうして?」  シンプルなそれは、同じ物に見える。 「…あ、そうだ……無くしたから、同じ物を買ったのよね?」  そう言い聞かせ様とするが、言葉の震えがそれをただの強がりだと物語る。 「そう…そうよ……気に入った物だから……っ」  摘み上げ、じっくり見てみてもやはりデザインは同じだった。  片方の、細かい傷の入った方を見やる。 「……この傷…」  以前、これとよく似た傷を持つ指輪を見た記憶があった。  こくり…とその白く細い喉を鳴らして唾液を嚥下すると、小夜子は机の中にあった指輪の中をそっと覗き見る。 『akiyosi』  どっ…と心臓が跳ね上がり、耳に響く心臓の音に驚いて身じろぐ。 「あ…えっと?」  眩暈にも似たパニックに、小夜子はふらりと傍の椅子に倒れ込む。  額に冷たい指先を当て、手の中の『akiyosi』と彫られた指輪を見詰める。 「これ…ブランドのロゴじゃ……」  小さく身を震わし、机に転がったままの指輪を摘み上げる。 「同じ………っナンバー…」  一目見てサイズ違いの分かる二つをぼんやりと眺め、ゆっくりと首を振った。 「……ちが……………っ、…」  尚も言い聞かせようとした小夜子の手の甲に、ぽとりと温かな雫が落ちる。  手を伝い落ちていく涙を眺めながら、その言い訳が余りにも苦しい物であると言う事を小夜子自身が痛感しながら二つの指輪を握り締めた。 「…秋良さんっ」  二つを握り込んだ拳を震わしながら、小夜子は噛み締めた唇の隙間から小さな嗚咽を漏らした。

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