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この場所に立ち尽くすその行動が幾日目になったか、曖昧な記憶を引き摺り出して確認しようとしてもはっきりとはしなかった。
玄関マットの上に立ち尽くし、恭司の帰りをぼんやりと待つ。
「……」
何度目だったか…と考えたが、思考は纏まらずに霧散する。
「……」
虚ろな目を足元へと向ける。
自分がなぜここに居るのかの理由が分からず、自問自答する。
「…俺、何やってんだろ…」
圭吾はここ数日、この場所から先へと進み、マンションから出た事がなかった。
通常の鍵以外、この部屋には何も掛けられていない。
靴もきちんと揃えられ、落とした視線の先に鎮座している。
一歩。
その一歩が踏み出せなかった。
『もう、店には出なくていいから』
そう言いながら恭司は優しく圭吾の髪を梳いた。
『用事もすべて俺がするから』
――――ケイはずっと、ここにいてくれ。
細い体を、力一杯抱きしめながら搾り出すように恭司はそう言った。
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