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「…ありがとう………」
心の底から感謝の言葉が零れる。
この世に代えの利かない、唯一無二の圭吾との縁。
「……嬉しそう」
「ああ…」
目を細め、掌に見入る秋良を小夜子が見詰める。
「圭吾」
「えっ!?」
どきりと心臓が跳ね上がり、狼狽が顔へと現れた。
「圭吾、また家に呼びたいですね」
「…ぁあ……うん、そうだね」
答えて以前に訪れた時の事を思い出す。
変わらない、きつい瞳。
傍にいた…谷恭司の存在。
「……少し、落ち着いてからかな」
ちり…と生まれた嫉妬の心を揉み消す様に、秋良は掌のリングをぐっと握り締めた。
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