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 どっどっ…と言う脈の音に邪魔されて小夜子の声が遠い。 「あ……っ…」 「……どうして、……圭吾の名前を呼ぶんですか…」  乱れたシーツの上、返事をする事もできずに秋良は蹲る。 「…秋良さん…どうして………っ」  くしゃっと小夜子の整った横顔が崩れ、俯いて嗚咽を零す。綺麗に切られ、茶色に染められた髪が後を追ってその顔を隠した。 「弟の名前を…っ……あなたと…圭吾は………っ」  顔を覆った手の隙間から雫と搾り出された言葉が漏れる。 「っ…」 「ぅ…ぁ……俺と、圭吾は………」  続けられず、秋良は言葉を失って唇を引き結んだ。 「そう言う、関係、……ですか?」  涙で濁った目がこちらを見る。  複雑な感情を映しこんだその瞳の色に、秋良はぶるりと震えて自分自身を掻き抱く。  昨夜、夢中で抱き締めた体がそこにある。  幾度も指と舌を這わせ、蹂躙した肌がカタカタと震え、孤独の色を落としている。 「…どう…なんですか?」  再度問われ、秋良は息を詰めたまま緩く首を振った。  否定や誤魔化しの言葉が見つけられずに深く息を吸う。 「……君の…考えてる通りだ…」  呟いて皺だらけのシャツを被り、スラックスに足を通してベッドから降りる。小さく軋むベッドの上で、小夜子の嗚咽に悲鳴が入り混じったのを聞きながら情事の痕の残る部屋を後にした。

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