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「感じてる?」 「……うん…」  慣れた舌遣いに絡む様に舐め上げられ、思わず浮いた尻に長く太い指が這いまわる。  その快感に喘ぐ動きに誤魔化してそっと涙を拭った。 「本当に?」  問い直され、まずい…と胸に嫌な予感が過る。 「ほん…と…っ……な?感じてる…」  シャツを捲り、固く尖り始めたそこに恭司の指を導く。卑猥に恭司の指の指を動かし、自らの赤い頂を摘まんでは押し潰し、こねて身を捩じらせる。固くなった先端をくりくりと指の腹で撫でる。 「…こんなにっ…固くなってる」 「俺に、感じてる?」  頷き、恭司の人差し指を口に含んで舌を這わせた。  先程恭司がした様に丹念に舌を絡ませ、唾液で滑らせる。 「恭司…ほら、…っ!」  振り上げられた拳にはっと身を竦ませ、衝撃に備える様に固く目を瞑った。  ごんっ  左のこめかみで鈍い音が響く、骨を直接伝わって届いたその音を理解した頃になってやっと、殴られた痛みが脳に届いた。  ぶるぶると振り下ろした拳を震わし、呆然とソファーに倒れ込む圭吾を見詰める恭司の瞳に水の幕が張る。 「ごめ……っごめん…」  大の男が泣き出すその瞬間を見る事にも慣れてしまった圭吾は、どくどくと脈打つ頭を振りながら体を起こして恭司の肩を抱いた。  拳の震えは全身へと移り、小さな子供の様に蹲る恭司を滑稽に見せていた。けれど、それをおくびにも出さずに圭吾はその体にしがみついた。 「いい…大丈夫だから……な?」 「ごめん………」  繰り返す恭司を許し、宥める圭吾の眉間にはいつの間にか深い皺が刻まれていた。

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