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「小夜子の幸せ、イコール、圭吾の願いだ」
「っ…願いじゃ…駄目なのかよっ」
「俺は、圭吾を幸せにしたい」
「俺の幸せは…っ」
更に込められた力に肺の空気が押され、圭吾の言葉が途切れる。
「違う」
「…っ……」
「それじゃ圭吾は幸せになれないし、俺も幸せになれない」
「っ…ぉ…まえの、…幸せなんて……」
関係ないと言おうとした言葉は口から出る事はなかった。
代わりに、しゃくりが上がる。
「俺は、自分勝手で我儘で、他の人間の事なんかどうでもいいから、幸せになりたい」
「し…、らな…」
「圭吾がいてくれないと、幸せになれない。圭吾、俺の為に、俺を幸せにする為に傍にいてくれ」
「…だ…って…」
「俺が…自分自身が幸せになりたいから、圭吾に傍にいて欲しい。それで他の人間が哀しもうが泣こうが圭吾には関係ない。俺の責任だ」
「そんな…」
自分を抱く時の熱さとは違う熱を籠らせた秋良の視線に気圧され、圭吾の眦からぽとんと雫が零れ落ちる。
すべてを背負うとするその意思が圭吾の胸を締め上げた。
「俺が自分の幸せの為にするんだから、責任は全部俺が背負う。だから…俺の傍にいてくれ」
圭吾以外の人間を切り捨てるその決意が、どんな業なのか、どんな罪になるのか分からなかったが、けれど傍らに圭吾がいると言う事に引き換えるなら些細な事だった。
「周りを悲しませることも、しがらみも、嫌悪も責も、罵倒も、罪とそう呼ばれる物は全部俺が背負う。だから、圭吾……俺の傍にいてくれないか?」
一度拳を作り、ぎゅっと力を込めてから圭吾はそっとそれを開いた。
手を秋良の背中に回す。
子供の我儘のような言葉。
けれど、ずっと後押しとして欲しかった言葉。
「…なんで、最後だけ弱気なんだよ」
涙を秋良の肩に擦り付けながら顔を上げる。
そして深く息を吐いた後に、苦笑交じりに囁いた。
「…ったく……そんな重たいもん、一人で、…背負うなよ…」
俺も一緒に背負うから…
そう呟いて圭吾は秋良を抱き締める腕に力を込めた。
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